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Fig.-1 Dynamic model

傾きのためアクチュエータヘの負荷が大きくなるが、パッシブな機構をアクチュエータと並列に組み合わせたハイブリッド方式とすれば、制御力の低減がはがれ、大型船への適用も可能となる。
通常、装置の要求性能は、対象船の稼働海域の波浪状況や波浪頻度などの海象条件に対して設定されるので、装置の制御系を考慮した上で、実海域を想定した不規則波中の動揺計算を行う。これにより、可動マスの重量、ストローク、モータの容量および、制御パラメータが決定されることになる。
そこで、本研究では、船体動揺に制御系を取り入れ定式化するとともに、動揺計算を行うことにより、能動型減揺装置を設計をする。ここでは、排水量約190tの調査観測船を対象にハイブリッド方式の装置を試作し、実海域試験を行い、本手法の有効性を検証したので報告する。
2.制御系設計
2−1.動揺制御手法
図1の力学モデルで、船体の運動につぎの仮定を与える。
(1)横揺れを船体重心回りの回転とみなし、そのほかの自由度との速成は無視する。
(2)船体に作用する減衰は、比例粘性減衰とする。このとき、船体および可動マスの運動方程式を線形化して表すと次式のようになる。
Iφ+Rφ+WGMφ=T+mdg(xd-lφ)-fdl (1)
mdxd=mdgφ+fd (2)
fd=fc+cd(lφ+xd)+kd(lφ-xd) (3)
ここで、
I:船体の重心回りの慣性モーメント
R:船体の減衰係数
W:船体の排水量
GM:メタセンタ高さ
φ:船体横揺れ角
Xd:可動マス変位
md:可動マスの質量
Cd:装置の減衰係数
kd:装置のばね定数
l:船体の重心から可動マス重心までの距離
fc:アクチュエータによる制御力
fd:装置が船体に作用する水平合力
T:波強制モーメント
g:重力加速度
であり、アクチュエータを持たないパッシブ方式では、fc=0とすればよい。
アクチュエータには電動モータを用いたので、その動特性を考慮するここでは、可動マスを変位制御で駆動し制御入力uに対する実変位Z(=Xd-lφ)の周波数応答を実験的に同定し、以下の二次遅れ系で近似する。
z+2ζmωmz+ωm2u-lφ+gφ (4)
ここで、ωmおよびζmは、それぞれ等価固有角振動数、等価減衰比を表す。制御系の設計には、LQ制御理論を用いる。x=[φzφz]T,w=Tと定義し、式(1)〜(4)を状態方程式の形で表すと次式となる。
x・Ax+bu+dw (5)
評価関数Jをつぎの二次形式で与える。
J・S∞o(xTQx+ru2)dy (6)
ここで、
Q:重み行列
r:重み係数
これを最小にする制御入力は、次式のリカッチ方程式
PA+ATP+Q−PBBTP/r=0 (7)
の解によって
u:-bTPx/r=-kx (8)
で与えられる。
2−2.浪強制モーメントの生成と制御系の設計手口
不規則波中の減揺効果を計算するため、波強制力を生成する。波強制力のスペクトルは、波スペクトルに波強制モーメント係数の周波数応答関数を乗じた次式で表せる。
S(f)=S∞oSw(f)F(f)2df (9)
ここで、
Sw(f):波スペクトル
このスペクトルを不規則な時刻歴波形に変換する。こ

 

 

 

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